【蔵】生もと もと摺り

昨日からいよいよ「生(き)もと」の酒母造りが始まりました。
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昨夜は、寒い中蔵の皆で「手もと」という作業を行いました。5度位のもろみを手でかき混ぜる作業です。
本日はそのもろみをいよいよ摺り潰す作業です。「もと摺り」とか「山卸(やまおろし)」と呼ばれる作業です。
ちなみにこちらの作業を廃止したのが「山廃仕込み(山卸廃止もと)」というわけです。
写真では楽そうに見えますが、結構骨の折れる作業です。明日は筋肉痛かと思われます(笑)
生もとや山廃のいわゆる育てもと系は、とにかく温度管理が勝負です。幸い蔵内も5度から6度位と最適な気温となっています。
以下少々専門的な話をさせていただきますと、育てもと系の一番の特徴は中性からスタートするということです。
一般的な「速醸酒母」は雑菌汚染防止の為「乳酸」という酸を添加し、酸性の状態でスタートします。
育てもと系はまず、5~6度という低温でスタートします。
温度を上げ下げして、数日すると井戸水に含まれる「硝酸還元菌(しょうさんかんげんきん)」と呼ばれる微生物が「亜硝酸」と呼ばれる成分を作り出し、初期の腐敗防止に役立ちます。
徐々に品温が上がってきますが、亜硝酸のお陰で腐敗することはありません。
そうこうしているうちに、亜硝酸に対して耐性のある「乳酸菌」が繁殖してきます。乳酸菌は「乳酸」と呼ばれる酸を生成します。なんと、乳酸菌は自ら作る乳酸によって死滅してしまいます。最初の亜硝酸もうまいことに乳酸の力で消えていきます。そこでやっと空気中の酵母が安心して繁殖できる環境が整うわけです。
ここ数年は当蔵では酵母を添加せずに酒母を造っています。自然任せの大変な作業です。
以前こんなことをいった人がいました。
「生もとづくりは微生物の命のバトンタッチだ。」
やがて酵母も、もろみにいってからは自ら作るアルコールによって死滅していくのです。
【文責 柏倉】

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